鴻上尚史著『ラブ アンド セックス』(角川書店)

本の旅人』2002年9月号-2004年5月号に連載されたものを1冊にまとめた本。全部で18の文章が収録されていて、各回ひとつの本や映画などを取り上げ、その内容にからめてテーマを設定し、SEXや性の話をしていく。例えば第1回では、佐野眞一著『東電OL殺人事件』(新潮社、現在では文庫版も出ている)を取り上げる。32歳で売春を始めたOLを、鴻上が以前付き合っていたSEXをすると数日間、頭痛がする女と関連させて話を進める。
SEXについて考える手始めに読むといい本だと思う。全部で18テーマ、ひとつあたり10数ページなので、広い領域を扱ってはいるが深いところまでは言及することができない。またSEXとは突き詰めれば、人と人とのコミュニケイションなわけで、王道なんてものが存在するわけもないのだ。
読みながら「河合香織との講演をセッティングした人は、よくこの組み合わせを考えたなあ」などと思っていたのだが、あとがきに

最終の原稿チェックの時期に、障害者の性のドキュメント本『セックスボランティア』(河合香織著 新潮社)が出版されました。障害者にも性欲がある、という当たり前のことをちゃんと見つめた優れた本です。時期が合わず、ちゃんと紹介できませんでしたが、お勧めです)

と書いてあった。これがあったから依頼したのだと思うけど、それでも見事な組み合わせには変わりない。あさってが楽しみだ。
余談
上に書いた「コミュニケイション」というのもそうなのだが、(一般的な表記はコミュニケーションだと思う)鴻上尚史カタカナ語を英語の発音に近いように表記していて、とても好感を持った。(セイフ・セックスとか)天声人語でいつか読んだのだが、セーターという言葉も日本に入ってきた当初は、英語の発音に近いスウェターというように表記されていたそうだ。大学入試などの英語の試験で、日本語と英語の発音のズレを突く嫌らしい問題は頻出だが、最初から紛らわしくない発音、表記がなされているべきだと思う。日本人の英語学習が円滑に進むように。