熊谷達也著『邂逅の森』(文藝春秋)

ここ5日間、2章ずつ読み進めた。かなり圧倒されるので、それぐらいのスピードでしか読めなかった、といった方が正しい。初出は別冊文藝春秋平成14年1月号〜平成15年7月号。隔月間の雑誌なので、1章が連載1回分になっている。連載ものの長編というと行き当たりばったりで、話のまとまりにかけるものが多い中で、『邂逅の森』はどういうふうに話を割り振るかを、あらかじめ決めてから書き始めていることを強く感じた。
話は単純。主人公の富治が、クマやシシを山の中で獲ることで生計を立てるマタギとして生きていく。それに加えて、富治の文枝、イクに対する恋心、マタギの集団の中での暮らしが描かれているだけである。こうした話の展開だけで二つの文学賞を受賞することは無理だっただろう。やはり、マタギとして狩りに出るシーンの圧倒的なスケールの自然描写があればこその同時受賞だ。
前にも書いたのだが購入した当初、1章だけ読んで「これはいかにも私の嫌いなタイプの小説だ」と早合点し、放置していた。だけどサイン会もあるということで、もう一度読み直してみてよかった。またまた繰り返しになるが、サイン会の模様(というほど書くことがあるのかどうかはわからない)は8/19の日記に書きたいと思う。よろしければ御覧を。
(追記)19日は家に帰るのが遅くなったため、サイン会の模様は20日の日記(id:amanomurakumo:20040820)へ。