中場利一著、重松清解説『シックスポケッツ・チルドレン』(集英社文庫、2010/1)

大阪府泉南に住む少年「ヤンチ」と、彼を取り巻く家族・友達(ツレ)の生きる姿を綴った1冊。章立ての形式がとられているが、それぞれで完結しており、連作に近い。
ここに出てくるやつらは、みんなろくなことをしていない。そんななかで描かれているのが、不良と非行は違うということ。どう異なるかは本書を読んでほしいが、中場さんの目線のやさしさと、まずしい環境にいる設定が心をゆさぶる。
解説もよかった。表題のポケッツから出てくるのは、金じゃないんだ、と。そしてまた、「重松さんからのパクリのつもり」と中場さんにいわしめた人物「ヨコワケ」について、オレの世界に帰ってこないと苦労するぞ、ともいっている。これは私は違うと思う。ヨコワケのような人間が、正しさのなかにいて、それでもやっぱり苦労してるのが重松清の小説。