瀬尾まいこ著『図書館の神様』(マガジンハウス)

全160P弱あるけどさっと読めるので、分類としては中編が適切なのだろうか。まあ、それはいいとして、この作品はあちらこちらで評判がよく、かなりの期待をもって読み始めた。それで読み終えた今、抱くのは「あれっ」っという感じ。確かにいい作品だとは思うけど、そんな大絶賛するほどなのかな。
主人公の女性講師は学生だった頃、バレーボール部のキャプテンを務めていた。その際に、部員に少々きつくあたってしまう。それで、その子が自殺してしまうことに。この出来事が主人公にはトラウマになっているようないないような。そのことをめぐる話が、この本のテーマなんだろうけど、そこまで深く描きこんでいない。まあ逆に言えば、さらっと書けてしまうあたりが、この人の才能なんだろうか。
著者は学校の非常勤講師をしているだけあって、授業中の風景などは、この仕事してなきゃ書けないよな、と思わせるところが多々あってよかった。

「じゃあ、八日だから八番。えっと、加藤さん読んで」
机の下に鏡を置いて前髪をいじっていた加藤さんはうっとうしそうに顔を上げると、教科書を開き始めた
「三十八ページ」
私は静かに告げた。(25Pより)

ここなんか、すごいリアリティーがあって、さすがだなと感心。ここで生徒が「今どこやってるの」とか聞かないところがいい。