小宮良之著『導かれし者 流浪のストライカー、福田健二の闘い』(角川文庫、2011/11)

Jを振り出しにパラグアイ、メキシコ、スペインと渡り歩いた男の記録。文庫化にあたって、単行本刊行後の4年がフォローされている。
サッカーは詳しくないので、この人物のことは知らなかった。「福田? レッズの?」と勘違いしたぐらい。
それでも面白く読めた。文章だけでプレースタイルがしっかり浮かび上がってくる。ゴールへの渇望、ゴールこそが道を切り開いてくれるという信念……。
あとはエピソードの強烈さも興味をひいてやまない。母の自殺。窮して、練習に通う電車賃をごまかす生活。
嫁と知り合う話もユニークでいい。捨てた手紙を後輩がゴミ箱から拾ってくれたという……。
この本を読みごたえのあるものにしているのは、監督に賭けを挑むような福田の性格だと思う。あとは日記をつけていたことが当時の記憶をたどりやすくした面があるかもしれない。
不満というか、欲をいえば、ストイコビッチの取材はできなかったのかなというのがある。