『ザ・コーヴ』

横浜ニューテアトルにて。メガネを忘れたので、なるべくまえのほうにいきたかったのだが、最前列は座れないようになっていた。理由はいわずもがなだろう。
本作の試みは3つほどある。まず入り江での漁を撮影すること。次に水銀の危険性を周知させること。そして国際捕鯨委員会における日本の工作活動を暴くこと。
漁の前段階として、音を発生させ、イルカを追い込む様子が映される。これは誰でも見られるそうだが、ぱたぱたと逃げる幾頭ものイルカが囲われていくのは、なかなかにショッキングだった。と同時に、波間に立つその「ぱたぱた」という音が編集によって増幅され、ショックな印象をもたらすよう仕向けられているかもしれないなと、注意はした。
その追い込みは、イルカが音に敏感で、水族館の浄水装置でさえストレスになるという性質によっている。そうであるならば、通常は海にいない人間のダイバーがイルカと触れあうことも、ストレスにはならないのだろうか。その点は、本作のスタッフに感じた大きな疑問だ。
肝心の入り江でのイルカ漁については、撮影方法の着想を得たシーンが、まるでフィクションのようで面白かった。実際に撮られたそれを、とくにかわいそうとか残虐だとは思わなかったが、やはり公にされないものを知りたい欲求が人間には存在している。スタッフの持っている主義は別として、彼らのやったことは週刊ポスト白骨温泉報道に通じるところがあると思った。