中江有里「私を脅迫したストーカー裁判傍聴記」(『文藝春秋』11月号)

昨年末に届いたメールから、8月の判決確定までがつづられている(全8ページ)。
内容の柱はふたつあり、ひとつは被害者と加害者のアンバランスというか、被害者は身の備えで行動が制約されるのに、相手は家にいながら自分の都合で攻撃が可能。そのことにやりきれなさを吐露している。
もうひとつは、問題に対応するうえで大事なのはなにかという話。ストーカー規制法はスルーしていては発動しないから、警告してもらう必要があること。匿名の加害者はすぐに消えがちなため、文章はプリントアウトすべきだということ。
好奇心で読んだ記事だったが、相手の卑劣さに対する切実な怒りが伝わってきた。今回は起訴されないだろうという見通しをくつがえして、有罪判決までもっていったが、中江はひとつの仕事と大量の時間を失った。さらに相手は執行猶予。収監されたわけではない。となれば、恐怖にかんしては現在進行形だろう。ひたすら損をするだけの被害者には同情しかない。