山田清機著『東京タクシードライバー』(朝日文庫、2016/2)

「13人の運転手を見つめた現代日本ノンフィクション」(帯より)。これまでの人生や乗務でのエピソードを取材している。
非常に面白い本だった。「新卒で入って定年まで」という職業ではないから、タクシーに至るまでの道もバラエティに富む。
たとえばある女性。農家の住み込みに応募してみたら、村じゅうの男にロックオンされ、これはかなわないと逃げてきたとか。
また別の男は芝居の道にケリをつけての転職。あるいは商社で莫大な借金を抱えた人もいる。
彼ら彼女らの人生はまちがいなく「現代日本」の縮図といえる。
一方でタクシーの仕事については、面白くはあるものの人による違いが少ない。誰からも同じような話が出てくる。
ひとつ不満なのが、カーナビについての言及がまったくないこと。道に迷ってお客さんに聞きながらなんとかたどりついた、みたいな話はいくつも出ているのだが、なぜカーナビを使わないのか。運転手にとってカーナビとはどういう存在なのか。それを知りたかった。ネットでカーナビ使わずに迷ってトラブルになった例をよく見るので……。