永田和宏著、重松清解説『歌に私は泣くだらう 妻・河野裕子 闘病の十年』(新潮文庫、2015/1)

歌人であり細胞生物学者の著者が、同じく歌人の妻に乳癌が発覚してから最期までを振り返るエッセイ。
たいへん興味深く読んだ。闘病記があまたあるなかで本書の特徴をあげると、まずそのときどきに作った歌を参照している点。これは歌人一家ならでは。
もうひとつは、病人が精神に支障をきたす時期があるのだが、その様子が克明に書かれている点。見方によっては故人の尊厳を貶めることにもなりかねない。書くことにはためらいもあっただろう。そのせめぎあいが文章からうかがえて、実に読ませる。
一番印象に残ったのは、歌集に細工をするシーン(p.66-68)。妻が闘病に触れた歌集を出す。妻の母にもそれは郵送する。しかし病気はバレないようにしたい。そこで母へ渡す用に別バージョンを作ってしまうという……。当人たちは必死なんだろうが、読者にはユーモラスに感じられた。
帯推薦文は是枝裕和

日曜劇場「流星ワゴン」

1/10に丸ビルで公開収録があるとのこと。また同日、完成披露試写会もおこなわれるが、すでに応募は締め切られている。
放送は18日スタート。
http://www.tbs.co.jp/ryusei_wagon/