『アクト・オブ・キリング』

鑑賞のきっかけはウェブの記事。町山智浩が報道に憤っていたやつ。
題材はインドネシアでかつてあった虐殺。本作は殺人をした当事者に状況を再現させ、その模様をおさめたドキュメンタリー。
手法として秀逸で、興味深く見られた。殺人者の語りがとにかく饒舌なのは印象的。日本ではないことだが、それについて想田和弘は、大戦に勝っていたら似た状況になったのではとパンフレットに書いている。
「戦争そのものが『善』であれば、そこで行われた殺人も『善』であり、英雄的行為になり得るからである」
鋭い指摘だと思う。そう考えてみると、本作は他人事ではない。
殺人のロジックについては、監督声明にもある。
「もし我々が殺人を犯し、自分を正当化できる可能性が残されているなら、ほとんどの人はそうするでしょう。(中略)悲劇的なのは、殺人を賞賛するには、さらなる悪行が必要だということです。誰か一人を殺してしまった後、同じような理由で他の誰かも殺すよう要請されたら、断ることはできません。なぜならもし断れば、最初の殺人も間違いだったと認めているようなものだからです」
これを読むと、オウム真理教などに通じるところもある。ますます他人事ではなくなってきた。
正直にいうと、見終えた段階ではうまくメッセージを受け取れなかった。パンフレットで事後的に勉強させてはもらったが、思考力のある人向け映画かもしれない。
サロンシネマ1にて。