『空より高く』(中央公論新社、2012/9)

もうすぐ閉校となる高校の、最後の3年生たちの物語。初出は2005年の読売新聞。連載時にも読んでいたが、それほど大きな違いはないように思う(後述)。
感想はストーリーが再読でも面白く読めたのと、あとは重松清の考えがつまってるなあと。ごはんが食えてりゃ幸せだ(p.269)とか、「夜空ノムコウ」に対する思い入れ(p.257-)とか……。歌詞の「全てが……」は、「自分の小説(で書いていること)のすべて」だと以前いっていた。

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奥付に「大幅な加筆をおこないました」とある。参考までに、連載時の章立てと、単行本でのタイトル(カッコ内)を並べてみる。

プロローグ(ピエロさんとの出会い
レッツ・ビギン(レッツ・ビギン!
ひとはみな一人では(ムクちゃんの変身
青春サバイバル(同左)
ヒコザの土俵際(同左)
帰ってきたピエロさん(同左)
ピエロさん、語る(フジトモさん、語る
ヤノジさんのVサイン:単行本のみ)
トンタマ・ジャグラーズ始動(トンタマ・ジャグラー
小春日和(単行本にはなし)
ドカの崖っぷち(同左)
俺たちの旅オレたちの旅
俺たちはピエロだ!(オレたちはピエロだ!
前略、未来さま(同左)
いつか街で会ったなら(トンタマ最後の祭り

以上のとおり、改題以外に大きな追加はなく、部分部分での書き加えにとどまっていると思う。
逆に手を入れないことで印象に残った箇所がある。それは登場人物の生年。「一九八六年」(p.188)と書かれている。ということは、高校3年だと2004年になり、だいたい連載時期と一致する。2012年の高校3年生ならば1994年生まれぐらいに直してもよかったわけだが、そこは2005年の高校生であることにこだわったのだろう。

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ところで、重松清はなぜ連載を終えても本にしないケースが頻発するのか。結局のところ、お金の面で本にするモチベーションが弱いのだろう。じゅうぶん儲けて、印税をかせぐ必要がないから……。

『空より高く』書評

評者は湯本香樹実さん。タイトルは「廃校が決まった高校で」。
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20121022-OYT8T00791.htm