林壮行著『松坂大輔のDNA』(アスコム、2007/11)

本書は日刊ゲンダイの連載がベースになっている。掲載分はネットにも以前あったのだが、再読しようと思ったときには見当たらなくなっていた。このたび単行本化されているのを知り、購入した次第。
しかしながら、私が読みたかった箇所は削られたようだ。それは、長田秀一郎について書かれた部分。横浜高校松坂世代の投手として、松坂より先に長田に目を付けていた。しかし小倉部長(当時)によると、長田は「公立志望だと嘘をついた(結局、私立の鎌倉学園に進学)」そうなのである。
これが事実とすれば、甲子園から遠ざかる高校に嘘をついてまでいったのはなぜだろう。
また、長田が横浜高校に入っていれば、松坂の人生は違ったものになっていたかもしれない。その意味で、長田は松坂世代のキーマンでもあるのかな、と。

      • -

以上、個人的な関心を書き連ねてきたが、本書はべらぼうに面白い。要約すれば、現在の松坂がいかにして成ったかを綴る物語だ。しかし、きれいなお話ではない。大半が周囲の思惑とか策略で、ドロドロなのである。
たとえば、松坂を干した江戸川南シニア指導者の弁明。本心は「やめたきゃやめろ」だったのに、「ムリさせてはいけないと考えた」と取り繕う。
あるいは松坂が帝京に決まりかけていた進学先を横浜に変更、それにより江戸川南リトルを去らねばならなくなった弟恭平の運命など……。
松坂という以上に、アマ野球界の暗部を知れる本といえるかもしれない。