藤沢周著、若林正恭解説『オレンジ・アンド・タール』(光文社文庫、2010/12)

親本は2000年、朝日新聞社(当時)刊。それは持っているのだが、文庫版も購入とあいなった。オードリー若林の解説があまりにもすばらしいからだ。
人には現状維持の習性があるらしい。このまえ新聞で読んだ。「オレンジ・アンド・タール」の高校生たちもそう。何かを始めない、始められない。読んでいると心を乱される。それは私がまだ青いからなのだろうか。
トモロウさんはいう。意味なんて最初からねえんだと。鬱屈とした日々のなか、なぜ生まれてきたんだと時に憤る私。そうか、意味なんてなかったのか。
本書はさざ波をたてるかと思えば、気持ちを楽にもする。まるで現実の人間関係のようだと思った。
そして5年ぶりの再読には、自分が過ごしたこの5年間がしっかり反映されていた。それが少しうれしかった。

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連載時からは12年以上たった。その間、トモロウの入院した病院は移転し、榎本加奈子は佐々木と結婚した。どうでもいいことだ。小説のスピリットは何も揺らいでいない。