雨宮処凛著、姜尚中解説『生きさせろ! 難民化する若者たち』(ちくま文庫、2010/11)

一言で紹介するなら、若者の労働問題を描いたルポルタージュか。個人的には現場の実態よりも、論争方面の記述を興味深く読んだ。
フリーターが直面する様々な批判がある。「役立つスキルを身につけろ」とか「世界にはもっと苦しんでる人もいる」とか。本書に触れれば、それらに対する理論武装ができる。
読者をアジテイトしつつ、読み物としての面白さも忘れていないのがいい。たとえば、ある男性が派遣で働き始める日のこと。新幹線駅前にボックスカーがやってきて、何人かをトレーニングセンターへ連れていく。男性はその様子を「まるで電波少年(笑)」*1という。こういうところは、まじめ一辺倒な本だと、落としちゃうだろうなと思った。

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余談だが、修学旅行について書いておきたい。本書には「結構お金かかるじゃないですか」*2という高校生の発言が紹介されている。
はたしていくら払っているんだろうか。自分のことを思い返してみても、すぐに金額が出てこない。実は費用を積み立てるという形式には、総額に対して無自覚にさせる意図もあるんじゃないのだろうか。そんなことを勘ぐってしまう。
行先について話せば、私は鎌倉市の公立小中で、小学校が日光、中学校が京都・奈良だった。定番である。
日光はまだいいにしても、京都・奈良は新幹線利用だ。高い金をかけて遠方を訪れる意味はあるのか。せいぜい静岡あたりにバスでいけば十分だろう。これからの時代は行先を近場に限定するとか、費用に対して金額制限をかけるべきだと思う。金銭面で参加をあきらめる生徒がかわいそうである。

*1:p.50。

*2:p.168。