濱野京子著、新海誠解説*1『トーキョー・クロスロード』(ポプラ文庫ピュアフル、2010/3)

「ポプラ文庫ピュアフル」って、なんで「ピュアフル文庫」とかぶる名前つけるんだろうと思ったら、wikipediaに「昨年11月に移管された」という記述。たしかに重なっている作品がある。
ジャイブのサイトにおけるピュアフル文庫のラインナップは68冊。ポプラ文庫ピュアフルは現在40冊。オリジナルの新刊を出しながら、ピュアフル文庫の作品についても徐々に了解をえつつ再刊行、という感じなのだろうか。

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主人公は森下栞(しおり)、高校生。クラスではわりあい普通のポジションにいる、らしい。そんな彼女がタイトルのごとく東京に生き、人と交錯しながら進んでいく物語。
本物の青春小説だなと思った。大きな出来事が起こるわけではない。ごく日常的な会話だったり行動がなされるだけだ。そのなかに、年代特有の戸惑いが実に丹念に描かれている。
さりげない設定もうまい。たとえば主人公の名前にしても意図があるし、吉見百穴を仲間と訪れるシーンでも、小学校の遠足でいくはずが雨でいきそびれていた、ということわりが、いかにもありそうだ。

半藤一利著『15歳の東京大空襲』(ちくまプリマー新書、2010/2)

著者自身の空襲体験を綴った本。大切な話から些細なエピソードまで書かれていて、飽くことなく読める。
とりわけ印象に残ったのは「欲しがりません勝つまでは」の出自(p.42-)と、「日常生活から戦争につながるようなことを、日々駆逐する」(p.163)、それが過ちを繰り返さない方策だという著者の主張。
戦争関連の本は、岩波ジュニア新書にはあるようだが、この著者を若者向けに起用した企画力はすばらしいと思う。

*1:『asta*』2009年1月号の再掲。