酒井順子著『女流阿房列車』(新潮社、2009/9)

まず装幀についてだが、新潮社装幀室ではない本って初めて見たかもしれない(佐藤可士和)。
途中で昼寝をしつつ、1日かけて読んだ。原さんは「(車内で)寝ててもエッセイが書けるのは、酒井さんの開いた新境地だ」と3日まえにいっていたが、そこは重要だと思う。
有名なポイントを見て描写するだけのエッセイなら、ほかにいくらでもある。だが酒井さんは寝る。それにより文章におのずと変化がつく。寝るって大事なのだ。あと「高校生の様子をよく見ている」(原さん)のもまた、酒井さんの書くものをオリジナルにしている。
以下いくつか。
(p.12)「ホットケーキ最後の一切れで皿に残ったメイプルシロップをグイと拭い」:同じようなことを私もやるが、やっぱり恥ずかしいのだろうか。
(p.45)風圧がすごい美佐島駅。いってみたい。
(p.84)平塚駅ホームにある駅そばで、きしめんを見つけたとの記述。ふーんと思って検索すると、ことし4月に閉店してしまったそうだ。ここもまた、地元業者からNREという残念な流れなのだろうか。