一色伸幸著『新装版 うつから帰って参りました』(アスコム、2009/4)

著者がこれまで書いてきた作品を引きながら、そこに見られるうつ病の影響を解き明かす。帯は「うつ病体験記」としているが、自伝としても読める面白い構成になっている。
一色さんは小学校半ばで、亀有から鎌倉に引っ越してきた。その学校は約20年後に私も通うことになるのだが、こんなことを書いている。

やっと親しくなった級友に、
「一色、行くべ」
と方言で誘われ、都落ちという言葉は知らなかっただろうけど、膝を抱えて丸くなりたい心境になった。
(p.20)

私も「べ」や「だべ」を使っていた。方言だという認識はなかった。よそ者からすると、そういう感情を抱くものだったんだなと気づかされる。ちなみに、中学校へあがったぐらいで、自然といわなくなったと思う。以上、本編とは何の関係もない思い出話。
帯文は「重松清氏、大絶賛!/心の迷宮からの帰還――/それは、とびきりの愛妻物語でもあった。」。この10月に文庫版が出て、解説を重松清が書くかなと思っていたが、そうはならなかった。