とあるコンビニオーナーの記憶

サークルKというチェーンがある。読むときは「K」にアクセントをつける、らしい。
私はたとえば「センターサークル」というときのように「サ」を強めていたのだが、小学校5年(1994年)のころ、Iという同級生の女にひどく馬鹿にされた。まあ、しようがない。Iの若い母親が当のサークルKでバイトをしていたのだから、それが正しいのだろう。

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近所にあったこのサークルKは、もともと造園会社の敷地だった。地元のちょっとした人がやっていた会社で、コンビニのオーナーとなったのもその男性だ。
この人は自分でもよく店に立つのだが、強烈で強烈で。べらんめえというか、そんな感じだった。齢のほどは60ぐらいだろうか。
あるとき、私は野球の練習をしていた合間、スパイクを履いたまま店に入った。すると、オーナーがこちらへやってくる。歩くたびに土が通路へ落ちていたのである。ちょうど掃除をしていたオーナーに指摘され、「ほかのお客さんに迷惑だから、出ていって」と叱られた。当然といえば当然だ。でもよそだったら、こうはならない。「出ていってください」とか「申し訳ないけどご遠慮ください」といったソフトな対応にとどまっているはずだ。

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かといって、別に嫌な人間でもない。中学生のころの話。当時大ブームだったたまごっちを、このサークルKで5個入荷することになった。購入者は抽選で決めるという。
経緯は忘れてしまったが、オーナーが私と弟へは売ってくれた。たぶん、普段から買い物してくれるから、みたいなことだったと思う。
総申し込み者が150人ぐらいいるなか、抽選番号1番と2番の私たち兄弟は当選した。

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店は2000年ごろ、つぶれた。納得である。客が全然入っていなかった。
それは立地のためではない。場所だけ見れば、悪くないどころかむしろいい部類に入る。原因はやはりオーナーだろう。
友人に聞いた話がある。弁当を「温める」と答えたら、「いつ食べるのか」聞かれた。「昼ごろ」というと、「それなら温めても変わらないよ」。結局、レンジしてもらえなかった。友人は話しながら、「客が温めろっていってんだから、温めろよ」と激怒していた。

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とまあ、これほどぶっ飛んだコンビニは珍しい。だが、均質なようでいて、それでもやはりちゃんと見れば、各店の「色」がある。コンビニって、そんなものかもしれない。