市来宏著『愛馬物語 クラリオンと歩む北の大地』(幻冬舎、2008/1)

「第2回感動ノンフィクション大賞」(幻冬舎・フジテレビ共催)にて大賞を受賞した作品。巻末には選考委員(大石静重松清横里隆、山田良明、館野晴彦)による選評掲載(各1ページ)。
著者の市来さんは教員だった当時、乗馬を趣味にしていた。そんなある日、クラリオンという乗用馬が処分されると聞く。彼はそれがかわいそうで、自分で引き取ることにした。金持ちならまだしも、普通の教員が、である。牧場なんて持ってないし、時間的制約もあって日中ずっとクラリオンの世話をするわけにはいかない。そんななかで、クラリオンへの愛がために奮闘する市来さんの物語。
単純に面白い1冊であった。著者は、牧場に小屋を建てたりだとか、徐々に設備を整えていく。その様子がいいのだ。読者としても、うまくいくといいなあと応援するような気持ちで読み進めた。
下記URLは、テレビ朝日人生の楽園」で著者が取り上げられたときのもの。
http://www.tv-asahi.co.jp/rakuen/back/2002_12_07/jikai.html
http://www.tv-asahi.co.jp/rakuen/back/2002_12_14/junin.html
http://www.tv-asahi.co.jp/rakuen/back/2002_12_14/r_aji.html

小野順子著『オモニ 在日朝鮮人の妻として生きた母』(幻冬舎、2008/1)

こちらは「第2回感動ノンフィクション大賞」の特別賞を受賞した作品。『愛馬物語』に同じく、巻末に選評が掲載されている。
サブタイトルは「母」なのだが、父母そして娘である著者も含めた一家の物語といっていいだろう。父母は金銭的、あるいは精神的な辛さゆえに、あちこち渡り歩くような生活を送る。それは「事実は小説より奇なり」という感じでとにかく壮絶。読了した後は、どっと疲れが襲ってきた。
作中、とりわけよかったエピソードがある。学校でスケッチの授業があった。母にクレヨンを買ってといえなかった著者。先生に「忘れました」というと、「取りにいきなさい」。それで家に戻り、母親に「どうしたの」と聞かれるのだが、やっぱり理由をいうことはできず。しつこく聞かれたすえに事情を話すと、母親はクレヨンを買って学校へ持ってきてくれた。後からわかったことがある。母親はセーターを売ることでお金を作り、クレヨンを買ったのだという。そのセーターを着た母の姿が好きだった著者だが、当時はなぜそれを着なくなったのか知らなかった…。