西武×日本ハム(24回戦、グッドウィルドーム)

石井貴引退試合を勝利で飾れず

ことしの夏に、貴の母校である藤嶺藤沢OBの人と話す機会があった。野球名門校みたいに、何十人もプロの選手を輩出している高校ではない。だからいっそう、出身者が愛でられる。OBの彼に、貴は母校の英雄的存在として位置づけられていた。
昨シーズン後半からの安定しないピッチングゆえに、私のなかでは貴の価値が下がりかけていた。しかし、英雄視する彼をまえにして気持ちは変わる。ライオンズファンの私が応援してやらないでどうする。
そういう心境にあるとき、しかし、貴の引退表明はなされてしまった。平日にもかかわらず、席を探すのに苦労するほどのファンが詰めかけ、「記憶」に残る男の最終登板を待つ。

2回裏

周りの人がやたら後ろのほうを振り返る。何だろうと思ったら、ファンに肩車された状態でライナが応援していた。しかも、直後にカブレラグランドスラムが飛び出して大興奮。ファンから缶ビールをもらうライナ。
5点リードになった。しかし、いまのライオンズにとってはセーフティリードにならない。

3回表

案の定(結果論ではなく)。

7回表

ついにブルペンへ姿を現す貴。三井の左隣で肩を作る。当然のごとく、ブルペン前には客が集まってくる。

9回表

ブルペンの面々、そして野手陣に迎えられ貴がマウンドへと歩む。投球練習を横で見つめるのは、外野からではしっかりと確認できなかったが伊東だったのだろう。
打席には田中賢介。もちろんファンは投球中も総立ちだ。最後は空振りで三球三振にしとめる。貴はバッターひとりで役目を終え、岩崎にバトンを渡す。後ろのほうからは、「まだ投げさせろ」という声も聞こえた。どうだろう。私はブルペンで岩崎が肩を作るところを見ていたから、まあ既定路線なんだなと納得したけど。
その岩崎。ぴりっとしないながらも何とか0に抑える。

9回裏

先頭は細川。このタイミングで球場主導のチャンステーマ1。昨年のプレーオフ第3戦でも同様の演出があったが、あれは何が何でも勝たなければいけなかった試合。もうBクラスが決定している状況で、この演出はどうかなと思う。結局、6球目を打って出て凡フライ。
9番水田。代打は高木浩之かと思いきやリーファーだった。後から知ったけど、あしたで帰国なのだそう。球場主導でチャンステーマ3。同じく凡フライ。
1番赤田。球場が何もしないのを見て、応援団はチャンステーマ2を選択してくれた。しかしながら、赤田もMICHEALの前に凡退で試合終了。

試合後

ファイターズの応援団から「がんばれ/がんばれ/ライオンズ」というエールが送られる。去年はホークスのエールに対して返すのにかなりの時間を要したが、今回はすぐに応じてくれた応援団。
「がんばれ/がんばれ/ファイターズ」
今シーズンは惜しくも何ともない状況だし、素直にエールを送ることができるかと思ったが、やはり涙がこぼれてしまう。きっと悔し涙なのだろう。ふがいない自分たちをどうにもできなかった…。
「がんばれ/がんばれ/ライオンズ」
しばらくしてもう1回、ファイターズからエールがきた。しかし、同じことを続けるわけにはいかない。しばらく考えたライオンズ応援団の選択はこれだった。
「ありがとう/ありがとう/ファイターズ」

セレモニー

場内に貴の節目節目の映像が流れる。そしてマイクの前に立った貴が口にしたのは、周囲への感謝と「もう肩が上がらない」という言葉だった。その肩でライオンズが積み重ねてきた貴重な勝利を思えば、もう「お疲れ様」という以外にない。
その後、娘といっしょに場内を一周する。まず3塁側、ファイターズベンチ前。ファンが真剣に悲しみに暮れているというのに、滑稽にもセギノールと抱き合う貴。泣きながら笑っちゃったよ。
レフトスタンド前へ到達するや、ファイターズファンから「貴」コール。うれしいね。しかも、後ろのほうで見ていたファンが次々とフェンス際まで降りてきてくれるのには感激。うちも、他球団選手の引退に立ち会うことになったら、この姿勢を見習いたい。
ライトスタンド。もちろん「貴」コール、そして次々と投げ込まれる紙テープ。ライオンズのベンチ前で、整列した選手たちと握手を交わし、貴の引退セレモニーが終わる。
引き続いて、伊東監督の挨拶。Bクラスは自分の責任。選手たちはよくやった。来年は選手たちがきっと期待に応えてくれる、と。こういった話しぶりからは、退任が基本線ながらも、後任人事がうまくいかなかった場合にはもう1年なんてこともあるのかなと思わせた。
そして、ファームも含めた選手全員で場内を一周し、ビクトリーロードを上がっていく。最後のひとりとして、時間をかけてファンとの握手に応じるのは貴だった。
こうしている間も、ファイターズファンはレフトスタンドでじっと待っている。2次会をやるために、である。本当に申し訳なく思う。
22:30。とっくに鳴り物応援ができなくなったなか、ファイターズの2次会が始まる。グラウンドに目をやると、レオ・ライナや高木大成がグラウンドを突っ切って、バックスクリーン側から外へ出る。することがなくなったライオンズファンは「大成」コール。大成は何度となくかしこまって頭を下げる。戦いは終われど、彼にとっては休めない日々が続くのだろう。ファンサービスにシーズンオフはないからね。

メモ

試合前に和田1000本安打、西口2000投球回の表彰。
国歌演奏前にかかる音楽が、昨シーズンよく使われた曲だった。やっぱりこれが好きだなあ、私は。
始球式は埼玉栄の女子硬式野球部員(?)駒井理依子さん。森本の振ったバットにボールが当たり、センター前へポテン。

スコアボード

チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
日本ハム 1 0 7 2 1 0 0 0 0 11
西武 1 5 0 0 1 0 0 0 0 7

得点経過

1回表、セギノールがライト線ライン際にタイムリー2ベース。
1回裏、和田が左中間にタイムリーヒット
2回裏、片岡がレフト前タイムリー。
2回裏、カブレラが右中間にグランドスラム
3回表、セギノールがレフト前タイムリー。
3回表、坪井がライト前タイムリー。
3回表、小谷野がライトの深いところへ犠牲フライ。
3回表、稲田がレフト前タイムリー。
3回表、森本がライト線ライン際へ3点タイムリー3ベース。
4回表、坪井がセンター前へタイムリー。
4回表、小谷野がレフト前へタイムリー。
5回表、稲葉がレフト線ライン際へタイムリー2ベース。
5回裏、カブレラが左中間へソロホームラン。

NPB公式より

試合時間:3:51
観衆:22037