坪内祐三著『文庫本福袋』(文藝春秋、2004/10)

常々、彼の書評には書評らしからぬ雰囲気を感じていた。それでこのたび本書を読んで、その書評らしからぬものが何なのか、わかったような気がする。
彼の書評は、「書物に対する評価」にはなっていない。そうではなくて、本の外堀を埋める作業とでもいおうか。つまり、バックグラウンドだとか、本が真に持つ意味合いを提示する。そうして外堀が埋められたことによって、私たち読者は本の核心にたどり着ける。彼の書くものは、そんな手引きめいた文章が多いように思う。
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以下余談。なぜこの本を買ったのか。あれは2005年6月ごろだったか。むしゃくしゃしていたのである。その理由が何だったのかはもう忘れたが、ストレス解消法のひとつとして、無駄に金を使うというのはよくあるものだと思う。そこで私は書店にて、値段の高そうな、それでいてまったく読みたくないわけでもない本を探した。それで、おっ、分厚い、高そうだなあと手に取ったのが、この2400円だったのである。
当然、すぐに読む気など起こらない。
3日ほどまえ、ふと気になって奥付を見た。「平成十六年十二月五日 第一刷」とある。たぶんないとは思うけど、もし文庫に落ちるとしたらそろそろか、そうなるまえには片付けておきたいなあと読み始めた次第。
ちなみに取り上げられている「194冊」(帯参照)のうち、読んだことがあるのは0冊だった。