『八日目の蝉』(中央公論新社、2007/3)

積読中だったのだが、第2回中央公論文芸賞を受賞*1ということで読んでみる。
そんなに高い期待はしていなかった。新聞連載時に、1/3ぐらいは読んでいて、ああ、新たなジャンルに挑戦したんだなあぐらいの認識だったからだ。それが読了したいまとなっては、ごめんなさいの一言。間違いなく、角田光代の最高傑作だ。いや、角田光代という枠をはずしても、それは変わらないだろう。賞をひとつ与えられたぐらいでは、称賛が全然足りていない。
凝ったディティールは、作中の出来事を実体験したんじゃないかとさえ思わせてしまうし、そして何より言葉が力強い*2。恥ずかしながら、連載中はこのことにまったく気づかなかった。たぶん新聞だと、1回1回ぶつぎりで、ストーリーを追うことに夢中だったんだと思う。
とにもかくにも、読んで損のない名作。

*1:http://www.chuko.co.jp/topics/topics.asp?reno=62

*2:とりわけ、「好きや嫌いではなく、私たちがどうしようもなく家族であったことに、私は今気づく」(p.294)という一節は見落とせない。