『対岸の彼女』英文版出版記念講演会

きのう15:00から、34号館453教室にて。タイトルは、「『対岸の彼女』、対岸の言葉へ――ニッポンの作者とアメリカの翻訳者と」となっている。
おふたりが入ってきて、向かって左側に角田さん、教卓を挟み右側にウェイン・P・ラマーズさんが着席。最初に、青山が真ん中に立ってあいさつしたのだが、マイクの入れ方がわからず。隣にいた角田さんがスイッチを入れ、音量調節までしてあげていた。ひごろ早稲田で教員をしている人間が、教員ではない人間にフォローをしてもらうという、なんとも情けない構図に苦笑。
角田さんは、翻訳について「私の書いたものをラマーズさんがすごく深いところでわかってくれている」と感じたそう。
ラマーズさんは、英訳するにあたっての呼称についての苦労をプリントにまとめてきた。それを説明し終え、おふたりの話は一段落。しかし、まだだいぶ時間が残っている。この後、どのように話が展開していくのかと思ったけど、翻訳者である青山からの質問も交えつつ、わりと肩の凝らない種のトークが続く。
角田「いままでで、いちばん訳しづらかったのは誰ですか?」
とか
ラマーズ「なぜ、『対岸の彼女』は掃除のおばさんだったのか?」
とか。
16:25過ぎ、会場からの質問へ。興味深かったのは、ラマーズさんの「連載が本になったときの重複がわずらわしい。アメリカではそういうこと(小説を雑誌に連載し、それを本にまとめること)はしない。直すべきだと思う」という指摘*1。質問者はその種の重複を「編集者の怠慢だと思う」と発言していたが、素直にはうなづきかねる。
こういうのって、現場ではどう考えられてるんだろう。「あっても別に困ることはない。だったら直すのは面倒だし、そのままにしておこう」というならば、それは怠慢以外の何でもないが、積極的に重複を残しているケースもあるんじゃないのかな。
17:15ごろ終了。角田さんの周りにはサインを求める学生たちが群がる。こういう様子を見ると、人気作家で、そして早稲田のOGなんだよなあということが、あらためて思われる。
戸山キャンパスの生協には、角田さんがサインをした『Woman on the other shore』(講談社インターナショナル)が並ぶ。脇には学生へのメッセージが書かれた色紙もあったのだが、「早大生」という呼称が使われていて、ほっとした。最近、早稲田の学生であっても、「早稲田生」なんていうやつがいるからなあ。

*1:第1回大江健三郎賞受賞作についての発言。