稲泉連著、重松清解説『僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由』(文春文庫)
2001年8月刊の単行本を文庫化。タイトル通り、「働く」ということについて、著者が計8人に取材し、まとめたもの。私としては、多かれ少なかれ、みんな悩んでるんだと安心した。
もうひとつ。この本は、男性著者の手で男性ばかりに会ったものだ。となれば、女性版を読んでみたい気になる。誰か書いてくれないかな。
あと、これは余談だが、「彼は舌打ちが聞こえてくるようなあからさまに迷惑そうな顔をして(以下略)」(p.9)という記述がある。「聞こえた」のではなく、「聞こえてくるような」だ。これは、すごくフェアな書き方だなと思った。
不快感を表す記述で、やたらと「舌打ち」に頼る作家がいる。だけど、実際それが聞こえることなんてめったにないから、わざとらしさを感じずにはいられなかったのだ、私は。