西武×ソフトバンク(プレーオフ第1ステージ3回戦、インボイスSEIBUドーム)

寺原v.s.ライオンズ打線

ライオンズが松坂の完封で先勝。後のなくなったホークスが第2戦で打線爆発。そして迎えたきょうの第3戦。
ライオンズ先発の西口は、不安な立ち上がりを三者凡退。以後も序盤は危なげないピッチングを見せる。対するホークス先発の寺原は、ライオンズからすれば、8月に2度続けて打ち込んでいる相手。しかし、打線がつながらず、投手戦の様相を見せ始める。
5回表、ここまではよく投げていた西口が2アウトからヒット2本で、1、3塁。だが、このピンチは山崎を三振に取って切り抜ける。
5回裏、0アウト1塁で中村。エンドランを失敗し、ランナーがいなくなった後、レフトへソロホームラン。きのうと同じくライオンズ1点先制。
6回表、1アウト1、2塁で松中を迎えたが、ショート正面への完璧なゲッツーコース。併殺でリードを守る。
6回裏、結局、先発の寺原を攻略できぬまま、この回から柳瀬にスイッチされてしまう。先頭の福地がフォアボールで出塁。片岡バントで1アウト2塁。一打で追加点のチャンスだが、中島、カブレラと凡退で加点できず。
7回表、1アウト2、3塁、一本出れば、同点、そして逆転という大ピンチを迎える。田上はショートゴロに打ち取ったが、まだピンチは続く。山崎に代え代打は大道ではなく稲嶺。ライトへタイムリーでついに1-1と同点に追いつかれた。なおも1、3塁で川崎へはデッドボール。同点で満塁の大ピンチ。この先、大村、柴原と左が続くところで、ライオンズはきのう打たれた星野を投入。押し出しの許されない場面、いきなりのコントロールミスでまたもや不安にさせたが、大村をなんとか凡フライにしとめ、同点で踏みとどまる。
8回表、この回も星野が続投。先頭の代打仲澤へは慎重にいきすぎフォアボール。続く松中にもフォアボールで0アウト1、2塁。ズレータを迎えるところで、ベンチは山岸をマウンドに。

山岸v.s.ズレータ

この試合の、そして今シーズンの運命を託すピッチャーとして、これ以上ないという思いで、マウンドへ向かう山岸を見つめた。
初球。さすがに29本のホームランを打ってる相手にまっすぐで入ることはできず、変化球でボール。次もボールで0-2。こうなってしまうと苦しい。1点もやれない場面。もちろん満塁にはできない。アンパイアの判定が厳しかったので、はっきりストライクとわかり、しかも打たれない球でなければいけない。0-2なので、まっすぐでも打ってくることはないと思ったが、バッテリーは慎重にいく。変化球で1-2。
なんとか1-2まではきた。次が勝負球だ。併殺でも2アウト3塁になってしまうので、内野ゴロを打たせるという選択肢はなかったと思う。やはり、三振かフライでランナーを進めずにアウトが取りたい。おのずと投げるボールは決まる。高めの釣り球だ。しかし、これにズレータは手を出してくれず、1-3となってしまった。
ここで勝負はついていたのかもしれない。0-2からストレートを投げられなかったように、このカウントでも投げられない。変化球を完璧にとらえたズレータの打球は高々と上がり、ホークスファンの待つレフトスタンドへ。勝ち越しの3ランホームラン。ズレータは第1ステージ突破を決めたぞといわんばかりの動きを見せてホームイン。4-1とホークス3点リードでライオンズは苦しくなった。

最後の粘り

同じ2年目のセカンド片岡が、意気消沈する山岸のもとに近づき、何ごとか話しかける。「あと2回攻撃があるから、気を落とさずに投げよう」ということだろう。
ランナーが消え、ストレートが投げられるようになった山岸は、のびのびとしたいつもどおりのピッチングに見えた。が、やはり何かが違っていたのか。2アウトから的場にタイムリー2ベースを許し、5-1。
ここでマウンドには三井。川崎をファーストゴロにしとめ3アウト。
8回裏、反撃を見せてほしかったが、先頭の赤田が初球打ちのショートゴロ。重いムードに包まれる。福地はねばったが三振。片岡も初球を打つ。1塁側ブルペン脇へふらふらっとあがった打球を好捕されてしまい、ひとりのランナーも出せず、残された攻撃はあと1回となった。
9回表、この回も三井が続投。きのう打ち込まれた石井貴はもう使えない。涌井、ギッセルはできることなら使わずにおきたいし、グラマンに重要な場面が務まるのかどうかは不安。小野寺は延長戦を考えればまだ使えない。とすれば、三井続投の判断はまっとうだろう。左の大村からでもある。
3人で締め、裏の攻撃に向けて勢いをつけたかったが、先頭の大村にデッドボール。仲澤はバントフライで1アウトにしたが、松中の打球は俊足の大村がホームインするのには十分な当たり。6-1とされ、残念ながら小野寺を使うことになる。
ライオンズのホームでありながら、3塁側のホークスファンに屈辱のウエーブを許す。
小野寺はこのプレーオフ初登板だったが、後続ふたりをしっかりと抑え、5点ビハインドで最後の攻撃へ。
9回裏、マウンドにはきのうと同じく馬原。とにかくランナーをためなければどうしようもない。先頭は中島。球場からいきなりチャンステーマ3の前奏が流れる。そしてそれに応えるかのように中島の打球は右中間への2ベース。一筋の希望が見え始める。
バッターはカブレラだが、まだまだランナーを出さなければいけない。球場からは再びチャンステーマ。打球はボテボテのサードゴロ。いつものカブレラであれば、早々と走るのをあきらめるところ。しかし、さすがに後がない場面だけあって、全力疾走を見せる。何でもないゴロだったのだが、カブレラの気持ちが勝ったのか、1塁へは投げられず、内野安打に。
0アウト1、2塁。5点差なので、まだランナーをためなければいけない。フラッグで青く染まる1塁側。バッター和田の打球はショートゴロ。併殺をねらえなくもなかったが、リードがあるので、1塁送球。1アウト、2、3塁に。
バッターは石井義人。とにかく塁に出てほしいとの思いもむなしく三振。とうとう2アウトまできてしまった。だが、打席には先制ホームランの中村。まだなんとかなる、なんとかしてくれる、俺たちの応援でなんとかしてやる。そんな思いで声を出し続けた。

終戦

当たりは一瞬、外野の間を抜くかのように見えたが、センター大村がほとんど定位置でしっかりとつかみ3アウト。ホークス6-ライオンズ1で試合終了。西武ライオンズ誕生以来、すべてリーグ優勝してきた4年に1度のワールドカップイヤーだが、それも6度で途切れることとなった。
「ごらんのように、本日の試合は…」というアナウンスが流れる場内。後ろのほうから、泣き声が聞こえてくる。それだけ気合入れて応援してたのだろう。そう思うと同時に、ここで泣けないなんて、俺の応援は所詮その程度のものだったのかと感じた。
ズレータがヒーローインタビューを受けるなか、ライオンズの選手たちがベンチから出てくる。そして整列し、ライトスタンドへ一礼。続いて1塁側内野席へ向けても頭を下げ後、ベンチへさがる。さらに、ひとりだけ遅れて出てきて、同じように礼をする*1。さらには、レオとライナもやってくる。悲しいよという仕草でお辞儀をする。仕草だけでなく、きっと中の人も泣いていることだろう。
殊勲選手を褒め称えた後のレフトスタンドから、「がんばれ/がんばれ/ライオンズ」というエールが送られる。それに応えて、「がんばれ/がんばれ/ホークス」と返す。自チーム以外に声援を送らなければならない悔しさにか、さっきは出なかった涙が零れ落ちてきた。
本格的にホークスの2次会が始まった。球場の係員が「当球場を出ますと、駅まで緩やかな下り坂が続いております」という案内を入れるけど、帰る気にはなれず、じっと下を向いて座る。しばらくして、結果が変わるわけではないし、いつまでもこうしているのは未練がましいなと思い、きっぱりと駅へ向かって歩き出す。
家に着き、手帳から第2ステージと日本シリーズの予定を消した。そんなふうにして、長い長い1日が終わる。
翌日、講義中に黒板を見るため眼鏡を取り出すと、きのうの涙の後が残っていた。

*1:スタンドからは誰だかわからなかった。近くにいた人が「よくやったぞ、義人」というからてっきり、ベンチで泣いていて立ち上がれなかったのかと思っていた。しかし、実際は義人ではなく松坂で、ユニフォームへの着替えに時間がかかったというのが真相らしい。