木堂椎「りはめより100倍恐ろしい」(『野性時代』2005年12月号)

なぜ読んだかというと、「りはめ」って何のことなのかと気になったから。それで結論はこう。

いじめなんかよりいじりのほうが全然怖いと思う。一文字違うだけだが、りはめより100倍恐ろしい。(p.147)

つまり、「りはめ」という単語があるわけじゃなくて、「いじめ」と「いじり」とを「は」で比較しているというわけだ。
物語の舞台は、高校の男子バスケットボール部。中学のときいじられキャラだった羽柴典孝は、高校で同じ過ちは繰り返すまいとする。集団のなかで自分がどういう位置に立てば、いじられずにすむのかを考えながら、毎日生きていく。しかし、むかしいじられキャラだったというのが、噂話で広まってしまう。いったいこのピンチ、どうやって切り抜ければいいのだろうか、という筋。
前半のほうでは、やたらと2chチックな言葉遣いに不快さを感じた。しかし、後半になると、多少難しい言葉なんかも出てきて、筆者は意外に読書経験豊富なのかな、なんて思わせる。あるいは、書きながら言葉覚えてきたのかもしれないけど。
これを高校生のときに読んでいたら、生きづらくなったかもしれない。毎日こんな計算して、人とつながらなきゃいけないのかなって。まあ、でも、大学生や社会人だって、自分の立場やキャラを考えながら生きている人はたくさんいるだろうし、そういう意味では、世代を超えて受け入れられる作品なのかもしれない。
体言止めが多く、漫画っぽいストーリーで読ませる。難点をいえば、タイトルにするほど、いじりといじめの違いに焦点が置かれていないところか。
何を評価基準にしてこの作品を読めばいいのかがわからないのだけど、一読の価値はあるんじゃないかと思う。

島本理生「クローバー」(『野性時代』2005年12月号)

双子の姉弟をめぐる恋愛模様を描いた短編。以前読んだ『リトル・バイ・リトル』よりも、全然うまくなってる。社会でいろいろなことを経験すれば、もっといいものが書けるようになりそうな作家だ。