「桐蔭学園の真実」第1回

キーワード「桐蔭学園」を作成したので、私が3年間(1999-2001年度)、外進生(高校から入学した人のこと、対義語は内進生)として過ごしてみてわかったことを、何回かにわたって書いてみたい。これから多感な時期を過ごそうとする人たちが、不幸な思いをしないために。

なぜ桐蔭を選んだのか

まず簡単に自己紹介をしておく。家から桐蔭までは片道1時間50分ほど。遠距離通学にあたると思う。
そんな私がなぜ桐蔭を選んだのか。やはり、進学実績が大きい、というかそれがすべて。
当時の桐蔭は全盛期の終わりごろで、東大合格者は全国3位だったのかな(もちろん、数字を公表している高校のうちで、の話)。それで桐蔭を選んだ。当時、塾通いをしていて、とても勉強が楽しく思えた。親の間で「子どもを通わせたくない」と、当時すでにいわれていた桐蔭を志望したのには、こんな気持ちで勉強が続けられれば、という思いもあった。
高校受験時は、桐蔭が第1志望。中学での成績はほとんどが「3」で、1つか2つ「4」があるぐらいだったので、大学受験のことを考慮すると、公立は受ける気にはならなかった(一方、桐蔭の内申書の扱いは、まったく見ないというわけではない、程度だったと思う)。
結果的に、桐蔭の理数科は落ちたものの、普通科には合格することができた。
桐蔭では3年で私立文系。現役では早稲田に受からず浪人。代ゼミ横浜校で1年過ごして、現在大学3年。
代ゼミではとてもいい思いができたし、早稲田にも入れたので、現役で落ちたことによって、桐蔭批判をするわけではない。

能力別指導

まず、勉強のことに関して。桐蔭では、学力に応じて、クラス分けがなされている。英語と数学がそれぞれ、普通科全体で7クラスぐらいだったか。年に4回テストを実施し、その結果に応じて、クラスが入れ替わる。私は英語が最上位(α1)、数学が3番目(α3)からのスタートだった。
能力別の是非はさまざまある。成績で分けたほうが効率的、という考え自体はごくまっとうなものだ。
きっちり勉強して入ってきた人と、スポーツ推薦でこれまで勉強はさっぱりという人とが共存していては、教える方もやりにくいだろうし。普通の公立校であれば、入学時にある程度、成績層が限定されるから、それほど能力別をやる必要はないけど、桐蔭ではピンからキリまでいる。やったほうが効率的なことには疑いがない。
けれど、年に4回、クラス分けを兼ねてテストをすることで、生徒の序列ができあがってしまう。差別とまではいわないものの、どのレベルのレッスン(クラス)にいるかで、人を判断する雰囲気がある。そのため、上位と下位の間では、なかなかつながりが持てない(こういうこと書くと、そんなのは努力次第とかいう人がいるんだろうなあ。そりゃあ、努力でどうにかなるけど、つながりが持ちにくい傾向がある、ということを、桐蔭学園の判断材料として提供しているだけなので)。ほかの公立校のように、ずっと同じ教室で授業受けてるわけじゃないし。
桐蔭は悪いことばかりでもない。成績はテストの点数に応じて、自動的に決められる。教師が自分の裁量で、「あいつは授業態度が悪いから」と「1」をつけることはいっさいできない。よって、きちんと授業を成り立たせるためには、成績のことをちらつかせるのではなく、教師が実力(もちろん暴力ではない)をもってしなければいけないのである。それができないならば、生徒の授業評価アンケートの結果で、上層部に悪印象を与えてしまうことになる。
生徒として、このシステムはとても平等だと感じた。

到達度教育の大嘘

Q授業について行けなくなることはありませんか?
A(一部抜粋)すべての教科の指導にあたって、中学では100満点中70点、高校では60点が全員取れるまで徹底して指導するシステムです。(中略)
能力別授業を行なう教科でも、上・中・下すべての段階で、最低この点数に到達するまで指導を行ないます。未到達の生徒には、責任指導制により、担当教師がその点数を取れるようになるまで徹底指導します。(http://www.toin.ac.jp/go/frame/f13.htmlより、全角数字は半角にあらためた)

こうはいうものの、実際は各教師の裁量に委ねられていて、誰かが指導実施の有無をチェックしたりするわけではない。よって、到達度教育など、まったく形骸化した、いや、もともと存在すらしていなかったかのようなシステムで、落ちこぼれはふつーに存在する。
私の学年にOという数学の教師がいた。彼ひとりだけが、60点を取れるまで徹底して何回も試験、補習をやる。ごくまっとうなことをやっているはずなのに、ほかの教員はその熱心ぶりにあきれていた。到達度教育なんて、そんなもの。桐蔭のセールスを真に受けないほうがいい。
きょうはこのへんで。次回は主に生活面について書いてみようと思う(翌日が続きになっているので、読みたい人は、日記の上のほうにある「次の日」をクリックしてください)。