彩河杏著『胸にほおばる、蛍草』(集英社文庫

第11回コバルト・ノベル大賞に「お子様ランチ・ロックソース」で入選後、初めての作品。1988年10/10初版発行。
収録されているのは表題作1編のみで、第1章、第2章、終章と分けられている。最初は、大学2年生の女の子、力(ちから)を主人公に、話が進む。ある日、力のもとに、以前家庭教師をしたことがあった高校2年の宝子(たからこ)が家出をしてくる。力の大学生活に宝子が割り込むなかで、恋とは何か、人とつながるとはどういうことなのかを見つけていく、というようなストーリー。意外な事実が明かされた後、第2章では、宝子側から物語が展開される。そして、締めくくりの終章。最後には、「誰でもない、あなたへ」という作者のあとがきエッセイがついている。
舞台となる大学は、具体的にどこだと書かれていないが、p.45にサンシャイン60が見えるとあるので、早稲田なのだろうと想像して読み進めた。いまも昔も大学の風景って変わらないんだな、と。
角田光代の新刊としてこの本を読んだとしてもわからないぐらい、実力的には完成されてるな、とも感じた。それは舞台が大学だったからなのかもしれないが。

7月28日付日本経済新聞夕刊

広告欄「Book Shop」に角田さんがエッセイを書いている。初めてのサイン会のこと、よくいく書店のことなど。