清水博子著『カギ』(集英社)

おとといからこの本を読んでたんだけど、タイミングよくというか、きょうの「週刊ブックレビュー」で、三田誠広がこの本を取り上げた。
初出は『すばる』2003年10月号。この本の初版発行は今年の4/10。まさかとは思うけど、blog等のウェブ日記が大ブームを迎えたために、本にしようとなったのかもしれない。
本文は、算用数字で日付が書かれた日記と、漢数字のものが、1/1から交互に並んでいく。p.7でそれが、姉妹によるものだとわかり、以下、大晦日まで日記が綴られる(途中で海外旅行にいったりして、姉妹の一方が空白になったりもする)。極論すれば、ただそれだけの話なんだけど、とても楽しめた。そして、三田さんがいってたように、批評にもなっている。たとえば、妹の日記文中における、夫とのやりとりの記録。

「雑誌には編集や校正や印刷所といくつも関門がある、あんたの日記は書き放題、だれもチェックしていない」
「ネットの読者はめっちゃカラいんやけどなあ」
「市場に流通していないだろう、経済の概念がない」
「会社がつくって売っとるもんがエラいんか?インディーズでもええんとちゃう?」
「それならプリントアウトして北の丸公園で露天販売してみろよ、警備員に捕まるからさ」(p.126)

出版業界の人間は、みんなこういう考えを持ってるのかな。