荻原浩著『明日の記憶』(光文社)

主人公は50歳になるサラリーマン。物忘れがひどくなったので、念のためにと病院にいってみたら、若年性アルツハイマー病との診断が下される。
ひたすら読むのがきつい。自分も主人公のようになってしまわないかと、心配になる。ページを繰りながら、打ちのめされた。
でも、そんな苦しみの極限状態にあるからこそ、ぶっきらぼうな慰めの言葉をありがたく感じられる。
ここまでは何の文句もなしによかった。ただ、おそらく連載の最後の1回分にあたる箇所だと思うが、菅原老人に会いにいく場面が余計。無理して話をまとめている。
もっとも著者はわかってこうしているようだ。5月23日付日本経済新聞夕刊によると、「…ハッピーエンドはありえない物語。でも救いのあるものにしたいと思い、それが読者にも受け入れてもらえたようでうれしい」という。私はそれを受け入れられない読者だった、ってことか。
ちなみに、奥付によると、タイトルの読みは「あす」じゃなくて「あした」の記憶。