5月1日付朝日新聞朝刊

読書欄に中島京子著『イトウの恋』(講談社)の書評が載っている。

4/29のトークショウ

ほかの方があまり書いていないことだけ補足程度に。

たかが入場券なのに、素敵。
入口でもらったパンフレットには、「文庫で読む、古本の香りがする作家たち」というリストがあり、お二人の選んだ本が、店内の棚に並べられていた。
トークショウは、2人に加え、ポプラ社矢内裕子さんを進行役に行なわれた。
会場についたとき、壇上に椅子が3つあるのを見て、司会の人の質問に2人がアンケート方式で答えるような単調なトークになってしまわないかと心配したが、杞憂だった。
矢内さんは黒子に徹して、2人の話が途切れたときに、うまく次につなげるように進めていく。彼女がマイクを口元に持っていって、何かしゃべろうとしたそのときに、角田さんが発言すると、いおうと思っていたことをぐっとこらえたのには感心。おかげでトークショウは、2人の話が冴えまくるとても楽しいものに。これで500円は安すぎる。
トークの最後には、角田さんが『古本道場』の末尾を朗読したのだが、これもよかった。先にあげたビラに矢内さんはこう書いている。

立ち読みでもいいので、二一四ページから始まる原稿の終わりの部分を、覗いてみてください。この原稿をいただいたとき、「ああ、この文章が読みたくて、角田さんに原稿をお願いしたんだなあ」と、私は自分の直感が正しかったことを思ったのでした。

ということで、この朗読、矢内さんの発案だったのだろう。これからも名企画を連発してほしいものだ(早川紀代秀の本も彼女のご担当だとか)。

角田光代岡崎武志著『古本道場』(ポプラ社

初出はポプラビーチ。収録されている文章のうちいくつかは読んでいたけど、三浦しをんさんがいっていたように、私もウェブで見るよりは、ごろごろと寝転がって読書したい人間なので、1冊にまとまってくれて、うれしい。
「一月某日、遠足気分で鎌倉へ」の項のなか

見事な晴天。新宿から湘南ライナーに乗り、鎌倉を目指す。(p.173)

初出時から気になっていたのだが、新宿から、午前中にライナー、しかも鎌倉・逗子方面ってあるんだろうか。おそらく湘南新宿ラインの誤りではないかと。
岡崎さんが鎌倉の古本屋6店舗あげているなかに、公文堂書店http://www.angel.ne.jp/~kohbundo/)というのがある。角田さんが鎌倉にいった日には休みだったらしく、ここへは訪れずじまいだったのだが、ぜひいってもらいたかった。そして、私が通ったこの店について、角田さんがどんな印象を受けるのか、知りたかったな。ここからは本の内容とはなにも関係のない思い出話。
中学2年の12月に、下馬交差点あたりの江ノ電の踏み切り近くにあった(今は別の場所に移った)Hi-STEPという塾に通い始めた。バスの停留所から、塾まで歩く道すがらにあったのが、この公文堂書店
これぞ古本屋という感じで、店内は暗く、本が雑然と積み重なっていて、中学生にはとても入りづらい雰囲気だった。だけど、塾までの道に、この本屋に寄る以外の娯楽というものが一切ない。だから、塾のある日は、ここで本を見て夢中になり、2、3分遅れて教室に入る、というパターンが多かった。
並べてある本のほとんどは、中学生には関心の持てない本ばかり。けれど、入口を入ってすぐのところに、わりと最近話題になったサブカルっぽい本や実用書がまとまっていたのと、店員さんが座っているレジの右側に漫画が積まれている一角があったので、そこをよく利用した。
ここで買ったのは、こんなもの(思いつくだけ)。

・『名門!多古西応援団』ほとんど全巻(月刊少年マガジンKC)
・『県立海高校野球部員山下たろーくん』ほとんど全巻(ジャンプコミックス
・『エドガー@サイプラス』(文藝春秋
・『ループ』(角川書店
・『完全自殺マニュアル』(太田出版
・『アサヒグラフ』増刊のオリンピック総集編。ロサンゼルス、ソウル、バルセロナアトランタシドニー*1(余談だけど、昨年のアテネオリンピック後には、『週刊朝日』の増刊として同じようなものが出た)。
・タイトル忘れたけど、ネコの死に方が何十個か紹介された絵本。

書きながら、いろいろ思い出してくる。『多古西応援団』は、バラで売られているものを買い集めていったんだけど、後半のほうの巻になると、セットの中にしかなかった。だから、「バラで売ってくれませんか」とお願いしたら、快く応じてくれた。
こんなこともあったな。あるとき、往復のバスの中で読むものがなくなったので、何か買いたい。だけど、いい本がないなあと思って、店員さんに「おすすめありますか」と聞いてみた。すると「うーん、おすすめってどういうのだろう」といいながら、手元に積み重ねてあった本のなかから『ループ』を取り出して、「こんなのどう」という。私は即答で「それお願いします」といって購入した。『リング』『らせん』を夏休みの読書の宿題で読んでいたから、店員さんのセレクトはどんぴしゃりだったといえる。
完全自殺マニュアル』は、手書きの紙がはさまっていて、そこには「死を早まるな」みたいなことが書いてあった。4/29の三浦しをんさんとの話のなかにもあったけど、こういう予期せぬ封入物との出会いが、新刊書店にはない古本のよさだよなあ。そういえば、この本の装丁が鈴木成一さんだったということを最近知った。
アサヒグラフ』は、手にとって見てほしいなと思ったんだけど、値段が書いてない。きっと高くて、あきらめざるをえない価格なんだろうと予想して聞いてみると、「1冊300円でどうですか」ときた。あんまり高くすると、私には手が出ないと思って安くしてくれたのかな、といまになって思う。
中学3年の2月に受験が終わり、塾にいくことがなくなったので、自然と公文堂書店からは遠ざかった。ここに寄ることが、あまりにも私の日常だったので、さびしくなってしまうかな、と思ったけど、あれから1度も訪れることなく現在に至っている。
でも、この『古本道場』を読んで、古本のよさを知り、またいってみたくなった。私の勝手な想像だが、そういうふうに思ってもらえれば、角田さん岡崎さんがこの本を書いた甲斐があるというものではないだろうか。

*1:書いてから気がついたけど、なんで1999年の2月に塾通いが終わったのに、2000年のシドニーの本があるんだろう。これはあとから買い足したものだったのかな?