『いとしのヒナゴン』(文藝春秋)

井川遥主演で映画化するのを念頭に、重松清が『オール讀物』に連載してきた長編。
石井信子は、東京の大学を卒業して3年の就職浪人。田舎で暮らす母親の薦めで、故郷比奈町の類人猿課で働くことになる。そこで、かって世間をにぎわせたヒナゴンを探す仕事に携わるんだけど、比奈町では財政に余裕がない。ヒナゴン探しに独立したセクションを設けることは、金の無駄だと批判を浴びる。そんな折、比奈町には近隣の市町村との合併話が持ち上がる。伸子と類人猿課、そして比奈町の運命はどうなる?こんな感じのストーリー。
矢沢永吉糸井重里、あだ名、方言、標語。重松清がこれでもか、これでもかと得意技を繰り出している。
ふるさとっていいよな、私も電車が2時間に1本とかいうところにいってみたいな。そんなことを(おそらくは筆者の計算どおり)思わされてしまう。この本に書かれたことは、うまくできすぎなのかもしれない。でも、夢を見たり、理想を語ったりするのが、お話の本来あるべき姿だと、私は思う。
それでもP114-P118あたりの展開は、ちょっとありきたりかなと感じた。まあ、ここがないとストーリーが成り立たないので、しょうがないけど。