宮脇俊三著、山崎正和解説『時刻表2万キロ』(河出文庫、1980/6)

国鉄全線完乗へと至る道程の終盤部分を綴った1冊。終盤ということはつまり乗りにくいところだらけで、今はなくなった線・移管された線も多い。突っ込んだ知識がない私は、「現存してるのかな」と調べながらの読書になった。
びっくりしたのがp.81。昭和51年(1976年)の国鉄発表によると、黒字だったのは新幹線・山手線・高崎線だけで、以下241線は赤字だという。そりゃあ、廃止ラッシュにもなるわな。
宮脇さんの旅で印象に残ったところは、まず実行日が決まっていない点(p.112)。方面別の計画は立てているが、それらをいつやるかは恣意的なのだという。なるほどねえ。鉄道が目的だと、そういう点では融通がきいていい。
あと、鉄道の時刻がフィットしないときにタクシーを使っているのも印象的。考える行程が多くなるわけで、それらを整理する能力が本をなしたといえるかもしれない。好きでやってるから苦ではないんだろうけど。
この本をなしたものをもうひとつあげると、やはり日本の鉄道のパンクチュアリティなんだろうな。

      • -

古本で入手したら、河出文庫第1回配本のチラシが入っていた。本書以外のタイトルは『枯木灘』と『僕って何』。著者プロフィール欄に現住所が番地まで載っていて、時代を感じる。