佐々木敦解説『学校の青空』(河出文庫、1999/5)

全4編からなる短編集。うち3編が1994-95年の『文藝』に掲載されたもの。もう1編が書き下ろし。
「青空」というタイトルで想起されるような、よくある青春ものを角田さんは書きはしない。であれば、本書に記されているのはどんな物語か。それは解説がいい尽くしている。
物事に必ず因果があるわけではない。ないこともある。しかしどちらかはわからない。なぜなら「私」には「私」が理解できないから。そういう嘘のない人物が織り成しているのが、本書収録の4編の物語である。
角田さんがティーンを書いているのを私は珍しいなと思ったが、解説には「角田光代の作品の多くは、ティーンエイジを語り手としている(近作では変わってきたが)」とある。これはコバルト文庫も含めての考えだろうか。

三浦しをん解説『これからはあるくのだ』(文春文庫、2003/9)

エッセイ集。「これからは歩くのだ」という収録作をひらがなに変換して、タイトルとしている。
解説がとても面白かった。とりわけ、角田作品の鮮烈さは角田さんの印象と実像のブレが生み出している(p.149)との指摘には納得。
印象に残ったのは「人を喜ばせるプロフェッショナル」でなされるすばらしいプレゼントと、横浜出身だから綴れる「夏のマリー」。